2017年06月17日

『少年少女世界推理文学全集』再説~全集のあらまし⑩ 本文の構成

《本文の構成》
 本体の中身の説明に移ります。
 扉から最終頁まで、順を追って見てみましょう。

①扉
 表紙を開き、見返しのあそび紙を捲ると扉が現れます。
 いよいよ物語の入り口です。

NO.15扉(セロファン).jpg


 見返しのあそび紙と扉の間に、セロファンが綴じられています。

 セロファンを捲るとこのように。

NO.15扉.jpg


 読み手の先へ先へとはやる気持ちをちょっと留めて、さらなる期待感をくすぐるような工夫です。

 このセロファン、初期に刷られた版にだけ付されたようで、私の所持本で該当するのは6冊ほど。

 このブログでときどき引用させていただく、「少年少女昭和ミステリ美術館」には、

“口絵に添えられた文字と同じ色のセロファンが付けられており、セロファン紙を通すと文字が消える仕掛けが施されていた。”

とあります。(暗記用下敷きみたいなものですね)

 私の所持本では、「NO.18 ジキル博士とハイド氏」のみ、この効果がバッチリ出ております(黄色のセロファンで、黄色の文字とイラストの一部が消える)が、ほかは必ずしもそうとは言えないようです。

③カラー口絵

NO.15口絵.jpg


 右側は、扉の裏面です。
 この口絵イラストは正直なところ、あまり面白味が感じられません。

④《はじめに》

NO.15《はじめに》.jpg


 訳者のご挨拶です。右側は、口絵の裏面にあたります。

⑤目次

NO.15目次1.jpg


NO.15目次2.jpg


 4頁に亘る、余白たっぷりの目次。
 カット絵のひとつもないのがちょっと寂しいですね。

⑥梗概

NO.15梗概.jpg


 「梗概」というのは私が勝手に名づけたのですが、この本の構成を、ごく簡単に表記した頁。

 巻によっては、イラストが全面に複数配されていたり、作品名にキャプションが添えられていたりと、全巻通じての統一感、というのはさほどありません。

⑦作品本文

NO.15作品1.jpg


 作品ごと、最初の頁に必ず挿絵が入ります。
 いよいよ「X線カメラのなぞ」の物語がスタート。

NO.15作品2.jpg


 「ああ面白かった」と余韻を楽しむ間もなく、「マルタの鷹」がスタート。

⑧作者と作品について

NO.15作者と作品について.jpg


 ひねくれた読者は、まずここから読んで、作品に取り掛かる方も多いかも知れませんね。
 そうでない読者は、息継ぐ間もなく全編の物語を読み終えて、その勢いでこの頁を読むことになります。
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2017年06月16日

『少年少女世界推理文学全集』再説~全集のあらまし⑨ 製本

 今回は、『少年少女世界推理文学全集』各巻共通の、外観的なフォーマット(製本)を中心に記します。

 記す…というより、現物の画像を示しながら、簡単にコメントを加える形で進めてみたいと思います。(特筆すべき事項はいくつかあるのですが、これらについては稿をあらためてやや詳しく記します。)

 ここではまず、さらりと。

 画像サンプルは、「NO.15 X線カメラのなぞ マルタの鷹」を取り上げました。

 訳者は亀山龍樹、絵は山下勇三が担当しています。

 基本的に巻ごとに訳者ひとり、絵者ひとりの割り当てです。

 訳者はその巻に収録された作品の翻訳、巻頭の紹介文「はじめに」、巻末近くの解説「作者と作品について」を担当、絵者は表紙、扉、口絵、本文などすべてのイラストを担当しているようです。

 なお、用語の定義等については、東京都製本工業組合が運営する次のサイトを参考にさせていただきました。(以下の文中、製本用語は太字下線で表しています。)

 製本のひきだし http://sei-hon.jp/

 まず…

 本の各部分の名称は次のとおり。(これも「製本のひきだし」からお借りしました。)

本の各部名称.jpg


 英語では、こんなふうになります。(ホンの余興ですいません)
チャリング・クロス84街84番地.jpg


 …と、製本の基本的な知識を押さえたところで。

《函》
 「本を保護するための紙函」というのが定義。

 ただ、「保護する」だけでなく、副次的には「本を装飾する」役割もあるかと思います。

NO.15函展開図.jpg

 画像は、サンプルのの外観を5方向からスキャンし、展開図風に切り貼りしたものです。

 製本用語でいうと、差し込み式(サック式)函機械函というつくりらしいです。
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2017年06月01日

『少年少女世界推理文学全集』再説~全集のあらまし⑧ 監修(続き)~読書指導

《監修》の続きです。

3)阪本一郎
 この方について語る材料を、私は持ち合わせていません。

 ウィキペディアによると、

“阪本 一郎(さかもと いちろう、1904年7月1日 - 1987年8月2日)は、日本の教育心理学者。
 東京文理科大学教育学部心理学科卒。同研究科修了・・・・・東京学芸大学教授、同付属図書館帳(←館長では?)・・・・・日本読書学会会長、名誉会長、76年国際読書功労賞。児童心理学、教育心理学、児童文化専攻。読書指導を行う。 漫画『のらくろ』や『サザエさん』を評価し、『ハレンチ学園』などを有害マンガとした。・・・・“

とあります。(一部省略)

 続いて、数多くの著書や論文などが列挙されていますが、私の記憶にひっかかるタイトルはひとつもありませんでした。

 強いて言うなら、永井豪の「ハレンチ学園」が有害マンガとして、世の親御さんたちから糾弾された…というような動きは知っていました。

 1970年頃のことですが、その頃すでにマンガは卒業していたので、あまり関心はなかったです。(大学時代に再び入門しました)

「ハレンチ学園」が元となり、全国の小学校でスカートめくりが流行したとあります。

 ですが他の記録では、1969年、小川ローザが出演した丸善石油のCMの影響で、幼児童の間にスカートめくりが流行するという社会現象が起こった…ともあります。

 猛スピードで走る自動車の巻き起こした風が、小川ローザのスカートをまくりあげ、「Oh!モーレツ」のフレーズがかぶるという、広告史上に残るスポットCM。ちなみに色は純白。

 ちゃんと「昭和ちびっこ広告手帳2」(青幻舎ビジュアル文庫 おおこしたかのぶ/ほうとうひろし・編 2009年10月第1刷)の表紙も飾っております。

ちびっこ広告手帳2.jpg


 さらに言うと、私が小学生の頃(1965年前後)にも、スカートめくりはフツーに流行っていましたけどね。

 男子が好きな女子に「スカートめくり」を仕掛けて、女子が「エッチ」とたしなめると、男子が「シェーッ」のポーズを決めて逃げ出す…教室の休み時間の一風景。

 スカートめくりの話で盛り上がってもしょうがないですね。

 それはともかく私自身は、読みたい本を自分で見つけて読むのが、基本スタンスでした。
 中には、教師や親が眉をひそめるような類の書物も含まれていたと思いますが、隠れて読む悪書の愉しみ、というのがまた格別で。

 ですから、「推薦図書」「読書感想文」「読書指導」などと、教育的見地から制約を受けながら本を読まされるのは、苦痛でしかありませんでした。

 そうした児童への読書の枠組みを、理論的に裏付ける立場の代表格が阪本一郎という方のようです。いえ、特別な恨みはないですよ。

 いま、そういう立場の方を探すとなれば、誰になるのでしょうか?

 さて、川端康成中野好夫阪本一郎、この3名の監修者が、『少年少女世界推理文学全集』の編集方針にどの程度かかわったのか。

 推理小説に造詣が深い、と思われる方はおりませんし、おそらく権威づけのための名義貸し程度…と推測します。

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2017年05月31日

『少年少女世界推理文学全集』再説~全集のあらまし⑦ ブックデザイン~監修

《ブックデザイン》
 あかね書房『少年少女世界推理文学全集』(以下、『本全集』)のブックデザインは、沢田重隆鈴木康行のお二人があたられています。

1)沢田重隆
1918年、東京生まれ。東京高等工芸学校(現千葉大学)図案科卒業。企業広告、装丁、挿絵、油彩など多方面で活躍。『生粋の下町 東京根岸』をはじめ、日本の都の景観や人々の暮らしを現代の眼で捉えるシリーズの絵にライフワークとして取り組んだ。2004年、没

―角川ソフィア文庫「京都 まちなかの暮らし」 (寿岳章子・著、 沢田 重隆・イラスト 2009年10月刊) の紹介文より引用

 身近なところでは、1927年に食料品店として創業され、1976年にスーパーマーケットとして営業開始した成城石井の、あのワインレッドのロゴマークも沢田重隆のデザインとか。

2)鈴木康行
 生年・経歴不詳―いまのところ、こう記すしかありません。
 手持ちの書籍をめくったり、小一時間ネット検索したりしたのですが、有用で確実なデータは見あたりませんでした。

 ただ、(断片的ではありますが)その業績を示すものは、いくつか確認できます。

 岩崎書店『SF世界の名作』全26巻(1966年~1967年)や河出書房『少年少女世界の文学』全24巻+別巻2巻(1966年~1968年)のブックデザイン(もしくは装丁)など、です。
 もっぱら児童書のブックデザインを手がけた方なのでしょうか、沢田さんのようにマルチに作品を残している、という形跡は見あたりませんでした。

 このお二人が、どういった役割分担だったのかは不明ですが、『本全集』のスマートな外観形成を果たした功績者の、筆頭にあげられるべきだと思います。

 ブックデザインの具体的内容については、稿をあらためます。

《監修》
 川端康成中野好夫阪本一郎の3名が名を連ねています。

1)川端康成
 この、日本を代表する小説家については、どなたもご存じでしょう。

 1899年生まれ、1972年没、代表作は…いえ、改めてここに記すのは野暮というもの。

『本全集』の刊行が始まったのは1963年、すでに川端康成の代表作の、ほとんどが出揃ったあとのことです。

 私が小学校から帰宅して、図書室から借りてきた『本全集』の何冊目かを読んでいると、文学には全く縁のない母親が、
「あれ、川端康成かい?」
と感心してくれた記憶があります。
 あかね書房の思惑、ズバリ的中ですね。

 小学校時代に、川端康成の名を知り、何かのクイズ番組で「国境の長いトンネルを抜けると雪国であつた」のフレーズを覚え、映画「伊豆の踊子」のスチール写真を見て、「あ、これまぼろし探偵に出てたお姉ちゃんだ」と大発見した気分になったりして…

 極めつけはノーベル文学賞の受賞(1968年)。
 父親の本棚から文学全集の一冊、「川端康成集」を抜き出すきっかけとなりました。

 最初は「みづうみ」という、ちょっと危ない長篇。

 小説家を、そのモチーフや傾向性によってエロスとタナトス、という二分法で分けるとすれば、川端康成は「タナトス指向の作家」だと思います。
「みづうみ」を読んで漠然と、それに近い感じを抱いたものです。

「山の音」「雪国」「伊豆の踊子」なども、確かこの本で読んだはず。

 新潮文庫に手を伸ばし、「掌の小説」「眠れる美女」「片腕」「浅草紅団」などの作品をぽつぽつと読み進めたのですが…

 1970年11月、三島由紀夫の割腹自殺を機に、読書の興味はそちらのほうに移った矢先、今度は川端康成ガス自殺の報が届いてまいりました。(1972年4月)

川端康成2冊.jpg


 最近、ちくま文庫「文豪怪談傑作選 川端康成集 片腕」 (東雅夫・編 2006年7月10日第1刷)や、実業之日本社文庫「乙女の港」(2011年10月15日初版第1刷)で、久々に川端康成の世界に浸ることができました。(最も後者は、中原淳一の挿絵に魅かれて買ったものですが)
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2017年05月28日

『少年少女世界推理文学全集』再説~全集のあらまし⑥ もしくは例によっての寄り道

 ブックデザインとはなんぞや?

 というところから、私の場合始めなくてはならないので、「全集のあらまし」に手間がかかって仕方ないのだ。

 この一連の記事を書こうと思いたったのは、手持ちの『少年少女世界推理文学全集』の中身を一冊一冊開陳しながら、「どうです、こんな洗練された趣味の児童全集が、半世紀以上も昔にあったんですよ」と、リアルタイムに馴染んできた者の、ある種の優越感を味わいたいからでした。

 しかし如何せん、そこに行きつくまでに、己が無知を糊塗する作業に追われ、遅々として筆が進みません・・・

(まあそんな愚痴をこぼす暇があったら、さっさと始めろって話ですね。)

 さて、ブックデザインとはなんぞや、ですが。

「そういえば確か…」と未整理書籍の山を掻き分けてみたら、やはりありました。

  「デザインのひきだし㉘」(グラフィック社 2016年6月25日 初版第1刷発行)

 この雑誌は、サブタイトルに「プロなら知っておきたいデザイン・印刷・紙・加工の実践情報誌」と謳うとおりの内容で、毎号「記事+サンプル」を本体に組み込んだユニークな造本になっています。

 年に3回ほど発行されており、知の媒体としての書物に興味ある者であれば、「プロでなくても知っておきたい」情報が詰まっていて、書店で手に取るたび気になる存在でした。(何冊かは入手しました。)

 で、昨年のいま時分に購入したのが、この第28号。
デザインのひきだし28造本とブックデザインと。.jpg


「造本とブックデザインと。」というこの号の特集に合わせ、「ユニークな」を超えて、「奇抜な」造本になっています。(どう奇抜なのかは、長くなるので説明省略。興味ある方は、ぜひ現物を手に取ってみてください。)

 しかも、その特集の中身を覗いてみると、さらに輪をかけた「奇天烈な」(あるいは「珍妙な」)造本の数々が紹介されていて、興味津々の内容です。

 それはともかく、この特集の緒言で、混同されやすい「造本」「装丁」「ブックデザイン」という用語について、次のように触れています。

「造本」とはいったいなんだろうか。辞書をめくると「印刷・製本・装丁などをして本をつくること。また、その技術面の設計や作業」とある。私の感覚では、製本を含めた本のかたちのことを指す言葉だと思っている。「装丁」はカバーや表紙、扉など外装のデザインを主に指していて、「ブックデザイン」は本文や造本を含めて本すべてのデザインを意味すると捉えている。


 これから世に送り出そうとする書物の、細部に亘る設計図が「ブックデザイン」。

 その設計図にしたがって、必要な技術を組みあわせ、最適な材料を調達しながら作成していくプロセスそのもの、またはその工程を経て最終的に出来あがった本の形を「造本」という。

「装丁」は「ブックデザイン」(そしてもちろん「造本」)の一要素で、いわば本の顔づくり(お化粧)。

といったところでしょうか。

 ハリウッド式の映画に例えるならば、

 題材や原作をみつけ、監督や脚本家、スタッフや俳優陣を手配し、スタジオやロケ地を選定し、資金を調達し、予算や制作スケジュールを組むプロデューサー・・・の役割が「ブックデザイン」

 プロデューサーの組んだ段取りにしたがって、監督が現場を指揮し、俳優が役柄を演じ、カメラマンが撮影し、撮影したフィルムを編集し、音入れをし、最終的に上映用フィルムに定着する作業、及び完成した映画そのもの・・・が「造本」

「装丁」はさしずめ、70mm、シネマスコープ、総天然色、ドルビーサラウンド、上映時間3時間・・・などといった映画の仕様を指す、と考えればわかりやすいでしょう。

 それをおさらいしたところで先に進めますが、実は、この特集の緒言から引用したいのは別のところにあります。
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