2018年05月20日

追悼: 女優 星由里子さん

 先日、星由里子さんが亡くなりました。

東宝特撮女優大全集より星由里子23.jpg

 
※洋泉社「東宝特撮女優大全集」より

 この女優さんについて、断片的な思い出を綴ります。

 父親に連れられて観に行き、途中からあまりの怖さにまともに目を向けられなかったのが「世界大戦争」(1961年東宝 松林宗恵監督)。

世界大戦争パンフレット.jpg

※「世界大戦争」パンフレットより


 私の幼少時のトラウマ映画です。

「きれいな人だな~」と、この映画でそこだけは見とれた、主人公(宝田明)の恋人役が星由里子さんでした。
 私にとって初のお目見えです。

 ラスト近く遠洋の船上にある恋人と、無線で最後の交信をするシーンは、子ども心にも忘れることができません。(そんな哀切極まる人生ドラマの余韻に浸る間もなく、世界中の都市のことごとくが核で吹き飛ばされ、映画は「終」の字幕をむかえることになるのですが)

「世界大戦争」と前後して、「モスラ」(1961年東宝 本多猪四郎監督)も観ているのですが、このときカメラマンの役を演じていたのは香川京子さん。

 星由里子さんは、「モスラ対ゴジラ」(1964年東宝 本多猪四郎監督)で、「モスラ」での香川さんの役柄をそのまま引き継いだような、新聞記者(の見習い?)役を演じていました。

東宝特撮女優大全集より星由里子04.jpg

※洋泉社「東宝特撮女優大全集」より「モスラ対ゴジラ」スチール


 さらに星由里子さんは、続く「三大怪獣 地球最大の決戦」(1964年東宝 本多猪四郎監督)でも、ラジオ局の記者役で登場、2作続けて同じような役柄で、ゴジラ、モスラとの共演を果たします。

 ですから、星由里子さんと聞いてまず思い浮かぶのは、負けん気の強い、張りきり記者。
 腕章をまいて現場に首を突っ込み、カメラのシャッターをバシバシ切る姿のイメージです。
 若気の至り的な頼りなさもあって、それがとても可愛らしく映ったものです。

 特撮映画の女優で第一に挙げたいのは水野久美さん(「怪獣大戦争」!「サンダ対ガイラ」!!そして何より「マタンゴ」!!!)となりますが、二番手は・・・

 やはり私にとっては、星由里子さんですね。

 水野久美=妖艶、星由里子=清楚・・・大雑把に言えば、そんな感じ。当時小学生だった私は、どちらも好みでした。

 水野久美さんには、本人へのロング・インタビューをまとめた「女優 水野久美」(水野久美/樋口尚文・著 2012年8月初版 洋泉社)という実に興味深く、楽しい評伝があります。

 星由里子さんについても、生前に同様の評伝が出版されていればなァ~と、 いまさらながら惜しまれます。

 ただ、これまでに様々な媒体で、出演作や芸歴に関するインタビュー、コメント、記事は数多く出ています.

 例えば次の一冊。

東宝特撮女優大全集.jpg

※洋泉社「東宝特撮女優大全集」表紙


「別冊映画秘宝 東宝特撮女優大全集」(洋泉社 2011年4月刊)
 東宝の特撮映画に登場する女優さんたちのスチール写真と記事を中心にまとめています。
 女優にフォーカスするあまり、映画の主役たる怪獣や怪人の写真が一枚もない、という徹底ぶり。(女優さんが宇宙人の役をやっているような場合は、当然その写真はございます)

 星由里子さんは、この中のインタビューで当時のことをふりかえり、嬉々として質問に答えられています。
 これらの記事をもとに、評伝をまとめてくれるところがあればいいのですが・・・洋泉社さん、お願いします。

 忘れちゃならないのが、もちろん若大将シリーズの澄ちゃん役。

 私はこのシリーズ、加山雄三が黒澤明監督「赤ひげ」の長い撮影から解放されて以降に作られた作品から観はじめたのですが、正直言えば怪獣映画が主体で、その併映作が「海の若大将」(1965年宝塚映画 古澤憲吾監督)や「エレキの若大将」(1965年 岩内克巳監督)だったりすると、ラッキーと思う程度でした。

 それが仲の良い同級生に、シングル盤すべて集めるほどの加山雄三ファンがおりまして。

 彼の家に遊びに行くと(おやつに出される即席ラーメンが楽しみでした)、卓上レコードプレイヤーで次々と加山雄三ソングを聞かされ、すっかり加山雄三ファンに洗脳された次第。
 私が生涯初めて買ったレコード盤は「夜空を仰いで/旅人よ」のカップリングでした。

 彼に誘われるまま、まさに若大将目当てに(私にとっては澄ちゃん見たさも手伝って)映画館に足を運ぶようになりました。

「アルプスの若大将」(1966年東宝 古沢憲吾監督)、「南太平洋の若大将」(1967年東宝 古沢憲吾監督)なんかがそうです。
 ちなみに「アルプスの若大将」と併映の「クレイジーだよ奇想天外」(1966年東宝 坪島孝監督)でも、星由里子さんがヒロインやってました。

 中学・高校の頃になると観るのは洋画主体となり、怪獣映画からも若大将シリーズからも離れていた時期がありましたが・・・

 大学時代に突如として若大将ブームが再燃するという現象があり、下宿の友人たちと連れ立って、旧作3本立てを何回も観に行った覚えがあります。
 おかげで、第1作「大学の若大将」(1961年東宝 杉江敏男監督)からほぼ全作見ることができました。(ただし若大将が社会人になってからのシリーズは除く)

 ですから、私の幼年~青年時代を通じて、スクリーンで最も多く接することのできた女優は、星由里子さんだったという話です。

 文芸作品できらりと光る熱演を見せる演技派女優―というよりは、娯楽作品のお飾り的な役柄の多いアイドル女優さんでしたが、それこそ「朗らかに、清く正しく美しく」という東宝映画のモットーそのままを体現した、また日本映画の一番幸福であった時代を象徴するような女優のおひとりでもありました。

 その後は意外な映画で、意外な役柄で出演されていたり、テレビドラマでたびたびご尊顔を拝するたび、「おっ」と思うのですが、やはり私は’60年代の、慎ましやかで少々勝気な役柄を、初々しく演じていたころの姿が忘れられません。

 あらためて星由里子さんの出演映画を思い浮かべると・・・

「銀座の若大将」(1962年東宝 杉江敏男監督)の劇中、二階の窓辺でギターをつま弾きながら歌う雄一(若大将)を、路地を挟んだ向かい側の窓辺から、澄子がうっとりと聞き惚れるシーン。
 星由里子さんが最も美しく輝き、そして最も観客のこころをくすぐるシーンはこれだったと、個人的には思います。

  星由里子(1943年~2018年)
   東京都千代田区出身
   1958年 東宝ミス・シンデレラ娘に優勝して芸能界入り
   1959年 東宝映画「すずかけの散歩道」で銀幕デビュー
   特撮シリーズ、若大将シリーズ以外にも、
   単発で時代劇、現代劇、戦記映画など出演多数
   東宝専属を離れてからは東映の新網走番外地シリーズなどの映画のほか、
   舞台、テレビドラマに活躍の場を広げる
   2018年5月16日、京都市内で病没 享年74歳

 私の若かりし頃に、多くの映画で胸をときめかせていただいたことに感謝し、心からのご冥福をお祈りいたします。

 今宵は、加山雄三、星由里子、水野久美が忍術合戦を繰り広げる、「戦国野郎」(1963年東宝 岡本喜八監督)でも再見しながら、故人を偲ぶことといたしましょう。
posted by Pendako at 11:17| Comment(0) | 断想・箸休め | 更新情報をチェックする
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