2017年04月07日

創元推理文庫との出会い・番外編~角川文庫のほうに寄り道

 アガサ・クリスティ「ABC殺人事件」(1962年 能島武文・訳)、「茶色の服を着た男」(1964年 赤冬子・訳)

 モーリス・ルブラン「怪盗ルパン」(1962年 水谷準・訳)

 コナン・ドイル「シァーロク・ホウムズの冒険」(1963年 鈴木幸夫・訳)、「シァーロク・ホウムズの回想」(1968年 鈴木幸夫・訳)、「失われた世界」(1967年 永井淳・訳)、「地球最後の日」(1967年 永井淳・訳)

 ジュール・ヴェルヌ「八十日間世界一周」(1963年 江口清・訳)

 エドガー・アラン・ポオ「黒猫・黄金虫 他」(1966年 大橋吉之輔・訳)

 H.G.ウェルズ「モロー博士の島」(1967年 能島武文・訳)

 E.R.バローズ「火星のプリンセス」(1967年 小笠原豊樹・訳)、「火星の女神イサス」(1967年 小笠原豊樹・訳)

 E.E.スミス「宇宙のスカイラーク」(1968年 宇野利泰・訳)

 他にも数冊あったような気がしますが、思い出せるのはこれぐらい。
 中学時代の一時期、私の書棚の一番上の段に並んでいた文庫本たちです。

 あまりヒネリのない月並みなラインナップですが、ミステリ・SF入門者が最初に手をつける図書としては妥当なところでしょう。

 創元推理文庫ではありません、すべて角川文庫です。

 前回の記事で「創元推理文庫解説目録」を入手し、そこにある書名をひとつひとつチェックする作業がこの上なく愉しくて・・・というようなことを思い出しているうち、同じ時期に角川文庫版でもミステリやSF、結構買っていたよなぁ、という記憶も甦ってきた次第。

 近所の本屋に創元推理文庫は置いてなくても、角川文庫はわりかし揃っていました。
 私としては、創元でしか読めない作品はともかく、角川のほうで出ているならそれでもOK、という柔軟なスタンスだったようです。

 シャーロック・ホームズではなくて、シャーロク・ホウムズ。
 英語の発音的にはこの方がより原音に近いのかもしれませんが、なんとなく窮屈な表記だなぁ~と、違和感を覚えながら読んでいました。

 ちなみに訳者の鈴木幸夫さんは英文学者で、「カンタベリー物語」のチョーサーをもじった筆名、千代有三で探偵小説も書いた・・・といった豆知識は、後に探偵小説専門誌「幻影城」で知った話。

 ポオの短編集は、難解な字句が散らばった韜晦的な文章で、ひどく読みにくかった覚えがあります。
 もちろん訳文に問題があったわけではなく、こちらの読解力の未熟さゆえだったと思いますが、たしか全編読み通せず投げ出したような気が・・・

 その少しあと、江戸川乱歩「探偵作家としてのエドガー・ポオ」という小評伝を読み俄然ポオに対する興味が湧いたタイミングで、谷崎精二個人訳の再編集版「ポオ全集」全6巻(春秋社1969~70年)や新装版「ポオ全集」全3巻(東京創元社 新装版1969~70年 丸谷才一他・訳)が刊行されたのをうけて、

 「世の中は、自分の趣味嗜好の変遷に合せて動いている」

という、極めてジコチュウな世界観を醸成したりしました。(別の局面でも同様のことがあり、この不思議な符合については改めて記したいと思います。)

 残念ながら金銭的にやり繰りできず、この段階ではポオには手が出せず仕舞いでしたが・・・未練がましく「内容見本」は取っておいたようです。

ポオ全集(内容見本).jpg


ポオ全集(内容見本)2.jpg

 後者の文庫本化である創元推理文庫「ポオ小説全集」全4巻(1974年)及び「ポオ 詩と詩論」(1979年)を入手して、ようやくその全貌を窺うことができました。

 角川文庫に戻って・・・

 SF作品では、表紙絵に加え、カラー口絵や挿絵を潤沢に配したものが多かったような気がします。

 ところがその絵柄たるや、絵心のない私でも溜息がでるほどがっかりな出来映えのものが多く、かえって「邪魔くさい」・・・とまで思ったほどです。

 「火星のプリンセス」「火星の女神イサス」など、角川文庫版で読むか創元推理文庫版で読むかで、作品そのものの評価も変わってしまうのではと思えるほど、挿絵画家の力量の差は歴然としたものがありました。

 創元版の挿絵は、言わずと知れた武部本一郎の作画。
 
 作中のヒロイン、デジャー・ソリスの描き方が腕の振るいどころでしょう。

 武部画伯は、グラマラスな身体に露出度の高い衣装を纏いながらも、どこか大和撫子的な憂いと奥床しさを漂わせる黒髪の佳人として、この気高き火星のプリンセスを描写しました。

火星のプリンセス(カバー原画)2.jpg


 その印象は、当時の日本の読者のみならず、海外のバローズ・ファンの心も掴んだといいます。

 角川文庫からは「イサス」に続く火星シリーズ初期3部作の完結編「火星の大元帥カーター」や金星シリーズなども出たようですが、そのころには創元推理文庫の存在が身近になっており、書店で手に取ることはありませんでした。

 「宇宙のスカイラーク」もそう。

 続く3冊(「スカイラーク三号」「ヴァレロンのスカイラーク」「スカイラーク対デュケーヌ」)と併せ、創元版で買い直しました。

 こちらの表紙画や挿絵は金森達画伯。
 SF関連の書籍では、雑誌・単行本・文庫本・児童書の区別なく、健筆を揮われていましたね。
探偵小説専門誌「幻影城」でも毎号のように挿絵を描いていました。

 いつもの癖で道草くったり寄り道したりで、取り留めのない文になってしまいましたが。

 中学時代に集めたミステリ・SF系の角川文庫、徐々に創元版やハヤカワ版などに入れ替えられ、いつしか私の書棚から消えていきました。

 私の記憶からも消え去ったかと思われたのですが、こうして駄文をしたためる程度には、頭の片隅に残っていたようです。


※文中、角川文庫の「書名」や(初版発行年・訳者名)は、雨宮孝氏の膨大なデータベース

翻訳作品集成(Japanese Translation List) ameqlist
http://ameqlist.com/


を参考にさせていただきました。
posted by Pendako at 11:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 創元推理文庫 | 更新情報をチェックする
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