2016年12月03日

創元推理文庫との出会い②~解説目録を手に入れる

 創元推理文庫との出会いの、続きです。

 海外の推理小説やSFばかりを刊行する、夢のような文庫シリーズの存在を、私はまず「火星の巨人ジョーグ」で知りました。
 しかしそれを知ったからと言って、次から次へと手に入れるという環境にありませんでした。

 近く(徒歩圏内)に本屋は数軒あり、小学生にしてはそれぞれの店の個性といった様なものを把握していたと思います。

 S書店は小学校の近くにあり、文房具屋を兼ねた書店。単行本や文庫本はあまり置いてなく、月刊誌・週刊誌が平台にうず高く並べられてました。

 ここで毎週土曜日、学校の帰りに「少年マガジン」を買うのが習慣でした。
 いつもある同級生といっしょでしたが、彼が買うのは「少年マガジン」「少年サンデー」「少年キング」の3冊。
 うらやましく思ったものです。

 あるときそのS書店で、高校生らしき学生が雑誌を万引きするのを目撃したことがあります。
 私の目の前での出来事です。その学生と目が合い、私はビビッたままどうすることもできずじまい。
 彼が万引きしたのは、「週刊プレイボーイ」でした。

 I書店は、近所では最も大きく品揃えも豊富な店。小・中学生のころ、私が最も頻繁に出入りした場所のひとつです。

 少ない小遣いをやりくりしながら、カッパ・コミックス版の『鉄腕アトム』『鉄人28号』サン・コミックス版で水木しげるの渋めの短編集「怪奇死人帳」「死者の招き」など、児童書でドイル「失われた世界」ガルシン「赤い花」トルストイ「戦争と平和」ベルヌ「十五少年漂流記」といったリライト版、マドレイン・ラングル「五次元世界のぼうけん」ペトリーニ「緑のほのお少年団」などの児童文学、少し背伸びして月刊『ボーイズ・ライフ』鶴書房版の『ピーナッツ・ブック』などなど・・・結構な数の本を贖ったものです。

 記憶力がいいなと思われるかもしれませんが、実家の本棚にこれらのほとんどがいまだに埃をかぶったまま在る、というだけの話。

 ここで中学の同級生と出くわしたことがあります。店の奥まった場所、(今でいう)アダルトコーナーあたり。
 彼は手にした雑誌を棚に戻しながら、いきなり聞いてきました。
「SMってどういう意味かねぇ?」
 私は、したり顔で答えました。
「サスペンス・ミステリーの略じゃない?」
 覚えたての英単語をとっさに並べただけですが、後年になって『SMマガジン』というかなりきわどい雑誌を手にしたとき、その表紙に「サスペンス&ミステリー」とサブタイトルが振ってあり、「なんだ、あってたじゃん」と納得した覚えがあります。
 いま思えば、ほほえましい光景です。

 Y書店は、小学校の同級生の母親がやっていた本屋。父親が早くに亡くなって、生活費工面のため開いた・・・とその同級生から聞いた覚えがあります。

 立地が悪く、参考書や雑誌をそこで買った記憶はありますが、あまり貢献できなかったようです。中学にあがって、しばらくして行ってみると無くなっていました。

 家から一番近かったのが○○書店(名前失念)で、入口の建て付けが悪い、店内が暗い、本の数が少ない(棚がすかすか)、本の配列がいい加減、店番のおばちゃんが常に監視の目を客に向けている・・・と、はなから本好きの入店を拒むかのような店構え。
 ただ他の書店と違って、わりと文庫本がたくさん置いてあったので、文庫本の安価さ手軽さに気付き始めた中学生にとっては重宝するお店でした。

 主に新潮文庫角川文庫、それと春陽文庫が結構な冊数並んでいました。
 新潮文庫はまだ大半が半透明のパラフィン紙カバーで、逆に角川文庫は絵や写真の印刷されたコート紙のカバーにほぼ切り替わりつつあった、そんな時代です。

 私はここで「江戸川乱歩傑作選」新潮文庫)を見つけ、続いて講談社『江戸川乱歩全集』の第1巻「屋根裏の散歩者」を購入し・・・この前後の顛末は以前の記事を参照してください。

 以上4軒の本屋に共通すること、それは当時、創元推理文庫が一冊も置かれてなかった、ということです。
「火星の巨人ジョーグ」を入手し、しっかりとその存在を認識してから探し回ったので、見落とし、見過ごしではないと思います。)

 どこに行けばあるんだろう、と思案しつつ、私はある方法を思いつきました。

 東京創元社(当時はまだ東京創元新社だったかな)にお手紙を書いたのです。

「近くの本屋に創元推理文庫が置いてありません。ついては直接注文したいので、文庫の目録のようなものがあったら送ってください」といった主旨で、返信用の切手も同封して・・・

 ほどなくして返信がありました。
 御礼の言葉に続いて、「直接注文しなくても、本屋に注文すれば取り寄せてくれますよ」みたいな内容。それと「返信切手は不要ですのでお返しします」とも。もちろん当時のことですから手書きです。

 中に「創元推理文庫解説目録」が同封されていました。

 出版社にとっては単なる広報活動の一環だったのでしょうが、田舎の中学生にとっては感謝感激の出来事でした。

 現在のそれに比べれば薄い、中綴じの冊子でしたが、しばらくそれは私にとって宝物のような存在になりました。

(続きはまた次回)
posted by Pendako at 12:23| Comment(0) | TrackBack(0) | 創元推理文庫 | 更新情報をチェックする
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