2016年12月02日

創元推理文庫との出会い①~最初の一冊に辿りつくまで

 『幻影城』から少し寄り道します。

 創元推理文庫には、いまだにお世話になってます。中学時代から数えてかれこれ50年、ずいぶんと長いお付き合いです。
 その中でも特に思い入れの深いタイトルについて、たまに幾つか、ぽつぽつと書いていこうと思います。

 最初にどれを取り上げようか・・・と考えていたところ、ある別の書名が頭に浮かびました。それは私が創元推理文庫に出会う前に読んだ児童書です。

 今日はそのあたりのことを思い出しながら書いてみます。

 ポーやドイルで推理小説に目覚めたのに続いて、ウェルズやベリヤーエフで空想科学小説の面白さにも気づき始めた小5、小6の頃のことです。
 小学校の図書室で借りた中に「火星のジョン・カーター」がありました。

 詳しいあらすじは省略しますが、簡単にまとめると―

 不思議な経緯で、戦火渦巻く火星の地に投げ込まれた、元軍人のジョン・カーター。
 野蛮で好戦的な緑色人の部族に捕えられますが、その並外れた身体能力と、勇敢で義侠心篤い人柄ゆえに、部族の中でめきめき成り上がっていくのですが、そんなある日、彼が遭遇したのが―

 赤色人の乗る飛行艇が、緑色人の部族(ジョン・カーターがいるのとは別の部族)に襲撃される事件。

 そこで緑色人の虜囚となった赤色人のプリンセス、絶世の美女デジャー・ソリスとの運命的な出会いをするのです。

 火星(この物語ではバルスームと言います)の地理、生態系、風土、国家、言語、風習などに触れながら、緑色人タルス・タルカスとの友情、忠犬ウーラ(犬じゃなく、10本脚の火星生物ですが)との交流なども織り込み、プリンセスをその母国に連れ戻すため、我らのヒーローが獅子奮迅の活躍を見せてくれます。

 救出、逃避行、謀略、幽閉、脱出、追跡、決闘、白兵戦・・・といった単語が入り乱れる紆余曲折の中で、初めはジョン・カーターに反発していた気位の高い王女も、しだいに彼に信頼と好意を寄せるようになり・・・やがて訪れる大団円・・・

 と思ったのも束の間、火星の地に全生命滅亡の危機が迫り来て・・・

 手に汗握る、波乱万丈の物語です。

 幽体離脱的に地球から火星にテレポートしたり
 地球人とは全く異質の、緑色人の生態に言及したり
 巨大な飛行艇をも動かす、特殊な光線が発見されていたり
 大気製造工場が、地表に大気を不断に供給していたり

 SF的なギミックは随所に散りばめられてはいるのですが、物語の骨格にSF的な趣向があるわけではありません。
 囚われの姫を敵の手から救い出す、という昔ながらの騎士道物語を、異世界に移植しただけのお話。

 ところが小学生の私にとっては、こうしたチャンバラ小説が、めちゃめちゃ面白かったのです。まあ、思春期前の私にとって、ヒーローとヒロインの恋愛的な成り行きについてはあまり興味なかったですが。

 おそらく私がこの時読んだのは、岩崎書店『SF世界の名作』(全26巻 1966年10月~1967年9月刊)の中の1冊「火星のジョン・カーター」に間違いないと思います。

 作者は言わずと知れたエドガー・ライス・バローズ(早川的にはバロウズ)ですね。

 ただその時には、この物語に続きがあるなどとは、夢にも気づきませんでした。図書室にそれを戻すといつもどおり、未読の本を物色する日々が続きました。

 しばらくして、私は家でとっていた朝刊の一面最下段の、このような広告を見つけました。

「シリーズの掉尾を飾るスペース・オペラの傑作!『火星の巨人ジョーグ』」(※この惹句は私の創作)

 この広告の切り抜きを父親に見せ、取り寄せてもらうようせがみました。(父親の勤務先の購買部に書籍がおいてあって、そこにない本も頼めば入手できたのです)

 何日かして、会社から帰った父親が1冊の文庫本を私に渡してくれました。

  エドガー・ライス・バローズ「火星の巨人ジョーグ」(1968年10月 厚木淳・訳)

 それこそ、私が人生最初に手した創元推理文庫でした。(おお、ようやくここに辿りついた)
 うれしいことに付録の小冊子が付いていました。

 タイトルや表紙絵の印刷されたコート紙のジャケットの、さらに上から透明ビニールのブックカバーが被せてあり、その袖の内側に文庫本サイズの、ページにして10ページ前後の小冊子「創元推理コーナー」が収まっていたのです。

 バローズについての近年の話題や、未訳作品の紹介、いくつかのシリーズを通しての作品評めいた文章などが載っており、充実した内容でした。(このへんうろ覚え)

 本文のほうにあった解説も読んで、およそ次のようなことを認識するに至りました。

1)バローズは職を転々とした挙句に、小説で身を立てた。処女作が『火星シリーズ』第1巻の前半部分にあたる「火星の月の下で」

2)創元推理文庫『火星シリーズ』は全部で11冊ある。

3)児童書版「火星のジョン・カーター」の、創元推理文庫版タイトルは「火星のプリンセス」、もちろんこれが第1巻目

4)以降、「火星の女神イサス」「―大元帥カーター」「―幻兵団」・・・と続き、その最終巻が「―巨人ジョーグ」

5)バローズはターザンという、アメリカ大衆文学史上最大級のヒーローを生み出した。アメリカには、その名にちなんだターザナという町もある。

6)『ターザン・シリーズ』は20冊以上書かれた。

7)他にも『金星シリーズ』『ペルシダー・シリーズ』『ムーン・シリーズ』『マッカー・シリーズ』などがある。

8)創元推理文庫では、引き続き『金星シリーズ』を訳出していく。

 バローズという新たな鉱脈を発見したような気分が先に立ち、実は肝心の、二つの中編を収めた「火星の巨人ジョーグ」の内容に関しては、なんとなく気の抜けたストーリーでがっかりしたのですが、私はさっそく町の本屋でバローズ本の探索を開始したのです。

(次回へ続く)
posted by Pendako at 00:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 創元推理文庫 | 更新情報をチェックする
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