2016年02月22日

江戸川乱歩 生誕120年・歿後50年をふりかえる~その6

 前回までで、江戸川乱歩 生誕120年・歿後50年の特集本(評伝・評論・解説・エッセーの類)のレヴューは、あらかた終わりました。(『ミステリマガジン 2015年9月号 特集 幻想と怪奇 乱歩輪舞ふたたび』は入手後に言及します。)
 
 他にも乱歩生誕120年・歿後50年にちなんだ様々な企画がありましたが、すべてには目が行き届かず、また注目しながらもほとんど現物に接しないままに終わってしまった、というのが正直なところです。
 
 当然、したり顔の論評などできませんので、いくつかをトピックスとして捉え、簡単な感想を記します。

ポプラ社から、少年探偵団シリーズのパスティーシュ作品が刊行されました。

 『みんなの少年探偵団』(2014年11月)万城目学湊かなえ小路幸也藤谷治・著
 『全員少年探偵団』(2014年12月)藤谷治・著
 『少年探偵』(2015年1月)小路幸也・著
 『恐怖の緑魔帝王』(2015年3月)芦原すなお・著
 『みんなの少年探偵団2』(2016年3月刊行予定)有栖川有栖歌野晶午大崎梢坂木司平山夢明・著

 以上が、いまのところのラインナップ。なんと豪華な布陣ではありませんか。

 ただ、私自身は年少時、少年探偵団シリーズは見事にすっ飛ばして、いきなり大人ものにワープしたので、特別な思い入れがあるわけではありません。
 後年、講談社から『少年倶楽部文庫 全42巻』(1975年10月~1976年11月)が刊行されたときに、初めて「怪人二十面相」「少年探偵団」を読んだ・・・ぐらいのもんです。

 それはともかく、この少年探偵団のパスティーシュというのは、意外な盲点だったかもしれません。
 もちろん怪人二十面相ということであれば、小林信彦や北村想、芦辺拓などにパロディ・パスティーシュの諸作がありますが、乱歩以外の作家による、少年探偵団の活躍を真正面から捉えた作品というのは、これまであまりなかったような気がします。

 ちょっと読んでみたい気がしてきました。

岩波書店から宮崎駿のカラ―口絵をあしらった乱歩の『幽霊塔』(2015年6月)が出版されて注目されました。

 あの岩波書店が乱歩の通俗長篇を???

 という驚きのあとに、宮崎駿を絡めてアリバイ作りをしたんだな、とついつい邪推してしまいました。(未読の方に一言、「幽霊塔」は通俗長篇とはいえ、エログロ色の薄い、破綻もすくない良質のスリラーです。)

 アリス・マリエル・ウィリアムソンの'A Woman in Grey'(1898年、 邦訳『灰色の女』論創社 2008年)を黒岩涙香が翻案した『幽霊塔』(1899年萬朝報に連載)の、そのまた翻案版が乱歩の『幽霊塔』
 この乱歩版『幽霊塔』を中学時代に読んだ宮崎駿が、アニメ『ルパン3世 カリオストロの城』の制作に携わった・・・と、「目羅博士の不思議な犯罪」と同様に、ここでもひとつの文学上のモチーフが、ときにメディアを飛び越えながら転生を繰り返しています。 
 岩波といえば、岩波文庫『江戸川乱歩短編集』(千葉俊二・編)が登場したのは2008年のこと。このときもちょっとした驚きでした。

江戸川乱歩短編集.jpg


 しかし、そこに収められた12の短編のタイトル―直球の代表作に変化球を織り込んだセレクション―を眺めて、十分に納得したものです。これらは探偵小説の古典としての要件を、ゆうに満たすものばかりです。

 ともあれこの勢いで、「闇に蠢く」「盲獣」「蟲」あたりを岩波文庫で出してもらいたいものです。

リブレ出版から『江戸川乱歩傑作集』全3巻刊行。(2015年7月~8月)
 これも乱歩のオリジナル作品を、装いもあらたに出しなおす、というコンセプトです。
 『江戸川乱歩傑作集(1)孤島の鬼』(2015年7月)、『同(2)人間椅子 屋根裏の散歩者』(2015年7月)、『同(3)芋虫』(2015年8月)の3冊。

 この選集のウリは、咎井淳のイラスト、ということらしいのですが、手に取ってパラパラしてみたところ、本文中に挿絵はありませんでしたし(どうも表紙画だけのようです)、咎井淳というイラストレーターにも馴染みがなかったので、購入には至りませんでした。

バジリコから異色の選集『盲獣』(2016年1月)刊行。
 
 まだ現物を手にしてませんが、新聞広告でよくお目にかかります。

 「切断される女体、人肉への飢渇、官能の鞭。
  鬼才乱歩が紡ぎ出す昭和の闇、悪夢の世界。
  『盲獣』、『闇に蠢く』、『陰獣』、
  傑作長編猟奇小説三作を一挙収録!」

の謳い文句が踊り、そこにもう一文添えられていて、

「読みやすい現代表記。」

とあります。???どういうことなのかなぁ~、と首を捻ってしまいます。
 確かに読みにくい漢字語や、馴染みのない言い回しはあるけど・・・(こんど書店で確かめてみよう)

 作品選択のコンセプトが明快で、潔いですね。私なら「陰獣」「蟲」を差し替えますが・・・

文春文庫から乱歩没後50年記念アンソロジー『江戸川乱歩傑作選 獣』および『江戸川乱歩傑作選 鏡』(いずれも文藝春秋 2016年2月)

 編者は、書き巧者読み巧者の桜庭一樹湊かなえ

 このおふたりが、それぞれどんな切り口で作品をセレクトしたか、興味深いものがあります。

春陽文庫から、旧江戸川乱歩文庫30巻のうち、ベスト13巻を選び、リーニュアル刊行『江戸川乱歩文庫 陰獣』(春陽堂書店 2015年2月)他

 全13巻のラインナップは『陰獣』『孤島の鬼』『人間椅子』『地獄の道化師』『屋根裏の散歩者』『黒蜥蜴』『パノラマ島奇談』『蜘蛛男』『D坂の殺人事件』『黄金仮面』『月と手袋』『化人幻戯』『心理試験』


 この「江戸川乱歩 生誕120年・歿後50年をふりかえる」は、次で最終回としたいと思います。
 浅薄なコメントになると思いますが、コミック作品や映像化作品などについて言及します。
 

posted by Pendako at 12:24| Comment(0) | TrackBack(0) | 江戸川乱歩 | 更新情報をチェックする
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