2013年04月18日

アイリッシュとウールリッチのこと あかね書房『少年少女世界推理文学全集』=その3

 前回の続きですが、「恐怖の黒いカーテン」を読み終えたとき、私は訳者(福島正実)による「作者と作品について」(および滑川道夫さんの「読書の手引き」)も丹念に読んで、作者のウィリアム・アイリッシュは、コーネル・ウールリッチという別名でも作品を書いている、ということを知ったようです。
巻末の、全20巻の書名を並べた案内広告も見たのだと思います。

 「なんだ、同じ人物の本がもう一巻あるってことか」という喜びを感じたことも覚えています。
全集の第16巻「ウールリッチ 非常階段/シンデレラとギャング」がそれです。

非常階段.jpg

 でもそれをすぐに借りてきて読む、というわけにはいきませんでした。前回も書きましたが、我が校の図書室では異例の回転率でしたから、次に借りるのは棚に残っている数冊の中から選ぶことになり、そのウールリッチの巻は、しばらく私の中では「幻の本」だったのです。

 そのおかげで、いろんな作家のいろんな作品を読むこともできました。
 ポオ、ルルー、ミルン、クリスティ、ヴァン・ダイン、カー、クイーン…おそらくそんな順番で、次々と借りてきては1日で読み終える、という日が続きました。
(そんな中で、出会ったのがシャーロック・ホームズ!ホームズについては、別の機会に書く事にします)

 それらと並行してSF(当時はまだ、空想科学小説なんて名称も残っていました)の世界にも目覚め始めており、『少年少女世界推理文学全集』だけに専念できなかったので、結局「非常階段/シンデレラとギャング」を読むことができたのは、小6の1学期頃だったと思います。(その時にちょっとした出来事があったのですが、その思い出については次の機会に)

《補足》
 海外ミステリに詳しい方なら周知のことでしょうが、コーネル・ジョージ・ハプリイ・ウールリッチ(米1903年~1968年 Cornell George Hopley Woolrich)が本名。
 コーネル・ウールリッチ(Cornell Woolrich)、ウィリアム・アイリッシュ(William Irish)、ジョージ・ハプリイ(George Hopley)の3つの筆名で、(ミステリでない作品も含めると)20作以上の長編と、200篇以上の中・短編を残しています。

 この作家については後々言及していく予定ですが、日本ではこれらの筆名の使い分けに、あまり頓着しないで訳出されてきました。

 あかね書房版のアイリッシュ「恐怖の黒いカーテン」(創元推理文庫版の「黒いカーテン」も)は、本国ではWoolrich名義で刊行されたものです。
 George Hopley名義のNight Has a Thousand Eyesの訳書(創元推理文庫版「夜は千の目を持つ」)はアイリッシュ名で、同じくFrightの訳書(早川書房の世界探偵小説全集版=通称ポケミスの「恐怖」)はウールリッチ名で出ています。

 近年この作家の作品が、本国のアメリカで出版される場合には、過去にIrish名義やHopley名義で刊行された作品も含め、ほとんどCornell Woolrich名義に統一されてきているようです。
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